ドラえもん危機

ミサイル研究所さん

 

第十二話

「前線豚共、準備はいいか?」

「切り込み隊長殿、ご冗談を。殺すが抜けていますよ」

このような会話をしているのは、飛行船からのカタパルトによる降下部隊である。

既に彼等は足をカタパルトに固定し、今か今かと出撃を待ち望んでいる。

「一度はあのアーカードによって死んだ俺たちがまた戦えるなんてなあ……」

切り込み隊長と呼ばれた吸血鬼が感慨深そうな顔をしていた。

彼は本編でも一番最初に英国本土に降り立った吸血鬼であったりもする。

彼等の活躍(?)はヘルシング6・7巻に書いてあるので興味のある方はお買い求め下さい。

何、教えろだって?

私の表現力では無理です。ですので、本編を読むことをおすすめします、本当に。

『先遣降下吸血鬼部隊、出撃体制を整えよ。繰り返す、出撃体制を整えよ。

この放送終了の20秒後にカタパルト発射を行う。至急出撃体制を整えよ』

ビーッ ビーッ ビーッ

サイレンがけたましく鳴り響き、吸血鬼達は姿勢を前屈みへ整えた。

『出撃5秒前 Vier(4) Dreh(3) Zwel(2) Eins(1)

Null(0) 出撃!』

ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ

飛行船から吸血鬼達が発射されてゆく。

しかし、そのことで彼等の顔が苦痛にもだえることや彼等が死んでしまうことはない。なぜなら彼等は吸血鬼だからだ。

吸血鬼達はその戦闘服をはためかせながらゆっくりと降りてゆく。

下に広がるB.O.Wの巣窟へ向かって。

オオオオオオオオオオオオオ

風の音のみが彼等の降下をただ伝える。

そして、東京要塞に設置された監視カメラも。

オオオオオオオオオオオオオオオオオ  スタッ

「こちらラインボードフォルトナー曹長、東京要塞内部に降り立ちました」

『了解。騎士十字勲章ものだ、今度一緒に飲もう』

緊張感のかけらも見られないが、その実吸血鬼達の目には飽くなきまでの闘争心が宿っている。

十人ほどが降り立ったところで、一体のタイラントが近づいてきた。

先ほどの監視カメラからの映像によって来たのであろうそれは雄叫びを上げていた。

その声はとても生物であるとは思えないほどの声ではあったが。

「おお、化け物だ!俺たちが打ち倒し、打ち倒される愛すべき宿敵だ!

さあみんな、奴らを殺したり殺されたりしよう!」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

吸血鬼達がタイラントに劣らないほどの雄叫びを上げた。

ズドドドドドドドドッ

それでもなおタイラントは近づいてくる。自らの手で彼等を抹消するために、殺しきるために。

ついにタイラントは彼等まであと10mと言うところまで来ていた。

そして、タイラントは己の勝利を確信した。なぜなら、この間合いまで人間が入られると、

どう反撃しようが後はタイラントの圧倒的な力の前にただただ殺されるしかないのだから。

だが、相手は百戦錬磨の吸血鬼である。そして、タイラントはその勝利の確信が自らの死の決定へと変わったことをすぐに知った。

「遅いんだよ、この死に損ないのデカ物」

一人の吸血鬼がそう言うと、タイラントのその巨体が一瞬で地面へと叩きつけられた。

ズドン

そして、タイラントが起きようとする瞬間に頭に手刀を叩き込んだ。

ズブブブブ

銃弾をはじくようなその頭に、まるで水面に手が吸い込まれるかのように手刀は沈んでいった。

そう、たったこれだけの攻撃で神羅選抜兵を壊滅に追いやったタイラントは殺された。

「弱すぎる、全くもって弱すぎる。これでは遊びにもならん」

一人の吸血鬼が酷く憤慨して言った。

「まあ、気にするな。報告ではもっと強い奴がいるそうだぞ」

「ならいいが…」

そしてこの二人は全く同時に死んでいるはずにタイラントに向けて焼却手榴弾を投げた。

そしてその爆発と共にタイラントが燃え始め、転がり始めた。

もはやその姿は身悶える哀れな動物にしか見えない。

吸血鬼達はその哀れな生き物に手持ちのアサルトライフルの弾を撃ち込んでいった。

タタタタタタタタタッ

まさに、百発百中である。撃つ弾は全て転がるタイラントへと吸収されていく。

そして、ついにタイラントは力尽き動かなくなってしまった。

「さあ、こんな雑魚にも人間共は手こずっている。さっさと助けようではないか、我らの兄弟を」

笑いを含ませながら吸血鬼達は壁から壁を蹴り消えていった。






「おお、凄い!あのタイラントがいとも簡単に殺されてしまうなんて!

欲しい!欲しいぞ、吸血鬼!」

総理大臣はと言うと、タイラントがやられたというのに無駄にハイテンションである。

「そ、総理、しかし、これでは我々は負けますよ」

オペレーターが心配そうに言った。

無理もない。圧倒的実力を見せつけていたタイラントが、いとも簡単に打ち破られてしまったのだから。

「君、まだ量産型のタイラントが一体消されただけじゃないかね。

まだ、テイロスもネメシスも龍も消されちゃあいない、ならばまだそのような心配をする必要はない。

それよりこの出し物を楽しみたまえ。滅多に見られないんだから」

総理大臣は依然として興奮したまま、オペレーターは青ざめてしまった。

(総理は何をお考えなのだ?一方的な勝利を望んでいると思いきや、

自分たちの惜敗を喜ぶ、一体何なんだ?)





To Be Continued

 

第十三話

「…吸血鬼達は、その、あの、恐ろしいですな、出木杉総長」

「まあ、確かに恐ろしいですがこれほど頼りになる味方もいないでしょう?」

「そうですが、あまりにも危険も伴う味方なのではないのですか…。

あの化け物を瞬殺するような奴等です、もしもの時に我々がピンチになる可能性だって…」

吸血鬼達のあまりに圧倒的な力を見せつけられ沈黙してしまっている参謀本部。

目の前のモニター兼コンソールには今その時間にも兵士視点の映像が映し出されていく。

生き残り部隊がほぼ集合地点へ行き着いた様子、壁を蹴り疾走する吸血鬼達の様子、飛行船内部の様子。

そして、壁を蹴る吸血鬼達の行く手を阻もうと飛び出し、

無惨にもただの肉の塊へと変わってゆく量産型のタイラント。

出木杉は少し気を落としたような声で言った。

「みなさんはこう思っていらっしゃいませんか?

『たった十人でこの戦果…、我々の勝利は確定したも同然だ

だから、全てが終わった後吸血鬼達をどうしようか』

と」

「まさにその通り!いまは我々はただ全てが終わった後のことを考えるのみ」

「物騒な奴等は用が済めばすぐに処断を考えねば」

参謀の六割方がそう言った意見を出した。

これを聞いて、出木杉は少しあきれた顔をし、

「これで勝利を確信できると?馬鹿馬鹿しいにも程がありますよ。

よく考えてください、映像に出て来た化け物であの吸血鬼達が殺したのはまだ一種類だけです。

 あの鉄の巨人や頭に恐らくは戦闘用コンピュータを装着したもの、醜悪な顔をした化け物、

三部隊を一瞬で消し去った謎の化け物、まだ繰り出されていない化け物、こいつらが残っています。

それと戦ってすらいない段階で勝利を確信するのはおごかましいと思いませんか?

いくら彼等が吸血鬼といえども無敵の生物ではありません、そのところを考慮して頂かねば」

 続けて、ガリベンが言った。

「私も総長の言うことに賛成だ。こんな段階で喜ぶのはまだまだ早すぎる。

我々はまだ、やっとまともな攻撃をかろうじて出来たと言うことを忘れてはならない」

苦し紛れに、まだ風貌は子供っぽい参謀が言った。

「しかし、あの実力…、残りも簡単に片づけることは可能でしょう」

やはり、吸血鬼万能と信じる者達は皆この意見に首を振った。

だが、これを司会の男が破壊した。

「まだ、一つしか見ていない時点で全てを判断するのは作戦の失敗、

すなわち、我々の消滅につながることになるのを忘れていられるのか?

なのに何故、そのような甘い見通しをされるのです。我々は何としても勝利を手に入れればならないと言うのに」

この一言が、漫画連合の全てであった。

戦争なら仮に一度敗戦したとしても、力を蓄えてゆけばまた起こし、今度は勝利の夢に手が届くことがある。

だが、彼等は違う。その一度の敗戦で何もかもを失い、御破算となってしまう。

いわば一世一代の大勝負である。そこに甘い見通しを立てて挑めばどうなるのかは歴史も語っている。

負ければ、みんな消えてゆくのである。

「しかも忘れたわけではないでしょう、陸上突入部隊が壊滅したこと。

飛行船でしか兵員を送れない上に、いつその飛行船という手段さえ破壊されるかわからない。

超常的兵器を全て機能停止に追い込む柳田理科雄の存在。

そして、会社自体がほぼ一つの国と言えるアンブレラ社軍部とBOWに自衛隊の超精鋭、東京要塞の堅牢さ。

未確認情報ではあるものの、政府が極秘に建造している兵器。

これほどのこちらに不利な状況にある中でそのような楽観的な判断を下すのはあまりもお粗末すぎますよ」

ガリベンがこの言葉をすらりと言いきった。

出木杉はその言葉にただひたすら頷いていた。

(さすがはいつも僕を脅かし、時には恐怖そのものとなった男だ。

これならば、楽観的な考えも一掃してくれるだろう)

楽観的な考えを持っていた者達は皆一気に目が覚めた顔になった。

自分たちが目の前の圧倒的な勝利に目を眩まされ、いかにも全体でも勝利しているという幻想から戻ってきたのだ。

「我々は何と愚かだったんだ。目の前のただ一部だけの勝利に浮かれ、

無謀な作戦を強行しようとしていた…」

出木杉がニヤリと笑い、

「わかってくれましたね。それでは、陸上部隊侵入の活路を開くための長距離射撃戦法の検討をこれより行う」

「了解!」







「はあ、こんなことになるんならあのウォルターとか言うおじいさんと

ストーム1とか言っていたおじいさんにいろいろ教えてもらえばよかったなあ…」

「のび太、何落胆してるんだ?」

あまり心配をしていなさそうに、と言うかめんどくさそうに文矢が聞いた。

やることが何一つ無いので奮起できないからだ。

「だって、あのまま基地に残っていれば、あのパーフェクトなワイヤー使いのウォルターさんや

伝説の老兵であるストーム1さんにいろいろ教えてもらえたかも知れないからだよ…。

あああ、勿体ないことをした」

言葉からもわかるようにのび太はかなり落ち込んでいる。

 それは、ワイヤーでビルを両断したりした男や、たった一人で怪獣や巨大昆虫、

挙げ句の果てには巨大なUFOまでも一人で破壊した男がいたのである、無理もない。

「でものび太、残ってたらあの鬼軍曹の鉄拳制裁や地獄の罵詈雑言を喰らってたぜ」

それを聞くとのび太は青ざめた。

その鬼軍曹とは、あまりの恐ろしい言葉で新兵を恐怖のどん底に陥れ、情け容赦の無い人間として恐れられている男である。

彼の名言(迷言)を挙げると、

「クソとたれる前にサーをつけろ」、「死ぬのか、俺のせいで死ぬつもりか?さっさと死ね!」、

「俺は平等主義者だから人種差別は絶対に許さん!なぜなら、イタ豚、ユダ豚、黒豚どれも平等に価値がないからだ」等である。

「ああ、確かに残らない方がよかったな…。うん」

のび太は直接には指導されていないが、こけて手榴弾をばらまいた兵士が見るも恐ろしい事をされているのを見ていたのだ。

その兵士は最後は発狂して鬼軍曹をライフルで超近距離から撃ったのだが、

鬼軍曹はもんどり打って倒れた後に平然と起きあがりまた説教を始めたりしていた。

「あの親父にしごかれたら人生も終わりだよな」

こういったのび太の横で文矢は何故か硬直していた。

「どうしたんだ文矢、そんなこの世の終わりを見ているかのような顔をして」

文矢はのび太の真後ろにいる人物をみて完全に硬直している。

のび太も不思議に思い後ろを見てみると、

「ぎゃああああああああああああっ!!」

そう、鬼軍曹ことハートマン軍曹が立っていた。

「貴様ら、<自主規制>で<自主規制>になるまで徹底的に訓練してやる。覚悟をしておけ」

目には爛々と怒りが燃え続けている。

どうやら、会話を都合の悪いところから全部聞いてしまったらしい。

「に、逃げるが勝ち!」

そう言って、文矢とのび太は逃げようとしたが、既に首の辺りをむんずと掴まれていた。

「貴様ら、俺から逃げられると思うなよ」

このときの二人はもはや、「おまえはもう死んでいる」というような顔だったらしい。

『ぎゃあああああああああああああああああああっっ!!!!!』










To Be Continued


お久しぶりです。作者です。

前半に結構真面目なムードだったのに、後半でマイナスになってしまいましたね。

やはり、ハートマン軍曹は軍隊には一人は欲しい方なので…。

とまあさておき、次回はDIOが出場予定です。

では。

 

第十四話 

吸血鬼と言えば、たいていの人はブラムストーカーの吸血鬼を思い浮かべるであろう。

え、ジョジョ? ああ、はあ。

仕切り直すこととしよう。

吸血鬼と言えば、誰しもがDIOを思い浮かべるであろう。

悪役ながらも素晴らしい存在感、カリスマ性で人を魅了する彼を。

 

だが彼は今、半ばいじけながらに与えられた自室で俯いていた。

「なぜ、なぜ、何故、何故……」

ブツブツ言いながらも、その目はテレビへと向いている。

そこには、太陽光がさんさんと降り注ぐ中に

何故か犬の耳が生えている少年が日向ぼっこをしていたり、

まだ少女に見える婦警が人が扱えそうもない大砲を点検していたり、

赤い貴族服に身を包んだ男性が寝ていたりする。

ここでDIOが思い出したように叫んだ。

「なぜ、奴等は吸血鬼だというのに太陽の下で平気なのだああああっ!

このDIOでさえ、太陽光を浴びるとすぐに灰と化すというのに、

何故なのだああああああああああああっ!」

もはや、自分のキャラさえも保てないほどに叫んだ。

彼は最後の大隊の兵員が平然としながら飛行船に乗り込み出撃していくのまで見ているのでなおさらだろう。

自分よりもいかにも弱そうな吸血鬼でさえも太陽の下を堂々と歩く、

とてもとても悔しいことだろう。

「くぅ、このDIOも奴等の如く太陽の下平然としていられるならば、

このような不名誉な職を与えられる事もないと言うのに」

ちなみに今の彼に与えられている役割は、「夜間警備員」である。

「おお、祈りたくはないが神よ!我に真の不死身たる力を!」

精神状態が不安定になってしまったのか、ついには天を仰ぎ始めてしまった。

だが、彼の部屋に神ではないが別の者が壁から侵入してきた。

「貴様の願いこの俺が叶えてやろう」

先ほどまで外にいたはずの赤い服を着た吸血鬼である。

「何者だ!このDIOの背後に立とうとは…、後悔しろ!

ザ・ワールド 時よ止まれ」


その瞬間、時間が止まった。

テレビの映像がそのまま止まり、侵入した吸血鬼も止まり、時計も止まっている。

だが、DIOだけは動いたいた。

「ククク、動くわけはないか…。では、貴様には死んでもらうとしよう」

そう言うと彼は高速でラッシュをその吸血鬼へと叩き込んだ。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」

一発を食らうごとに吸血鬼は血を飛散させ肉の塊になって行く。

そして、

「時は動き出す」

この一言と共に止まっていた時間は動き出した。

DIOの目の前にはもはやただの肉塊となった吸血鬼が転がっている。

「ふうん、このDIOの部屋に入ったのが間違いであったな」

 ここでDIOも自信を取り戻したようである。

だが、殺したはずの肉塊から声が聞こえる。

「甘い、そんな事じゃあこの私を殺しきることは出来ない。

化け物を倒すのはいつだって人間、人間でなくてはいけないのだ。

おまえもそうだろう、吸血鬼DIOよ」

DIOが声がした方向に振り向くと、肉塊が元の形へと再生を始めていた。

「な、何ぃ!貴様も再生できるだと!」

「何もおまえだけの能力じゃあないよ。命の通貨として血を吸った吸血鬼ならばこれくらい出来るだろう」

DIOが驚いているのに対してこの吸血鬼はあまりにも冷静、いや、楽しそうに話している。

「俺を殺そうとしたってそれは無理な話だ。

もし俺を殺しきろうというのならば、幾億幾万の時間がかかるであろう…」

「な、な、な……」

もはや、DIOでさえも驚くという話になってしまっていた。

「俺は死ねない、膨大な俺の過去を同じく膨大な俺の未来が押し潰すまで…。

血を吸った者達の命が私の中にあり続ける限り。

だが、おまえはどうだ?

血を吸ってもひたすら太陽におびえる、それは血を吸った者達に申し訳ないことではないか?

力はある能力もある、だが、太陽に勝てない。

悲しいことではないか」

「貴様ァ!このDIOに何が言いたい!」

「なぁに、簡単なことだ。私の血を飲め、ただそれだけだ」

この吸血鬼は前置きがかなり長かったにもかかわらず、用件はかなり少なかった。

これにはDIOも驚きすぎて固まってしまった。

「どうした、DIOよ。太陽の下で怯えずに歩いてみたくはないのか?」

DIOはここで思い出したように動きを取り戻し、

「ほう、して吸血法はどのように」

この言葉が言い終わるか言い終わらないかの間に目の前に輸血パックが無造作に投げ置かれた。

「これを飲め、以上だ」

さすがのDIOも目を丸くした。

輸血パック一つで太陽を恐れずに済むという悪徳商法のような事を言われたので当然であるとも言えるが…。

「どうした飲まないのか?」

この吸血鬼は声色こそ心配そうだが、顔は猟奇的な笑顔に満ちている。

「いや、これは輸血パックだろう。しかもこんな物一つで太陽を恐れずに済むなど…」

「それは私の血液だ、大丈夫だ。

さあ早く飲め、お楽しみはこれからだ。

ハリー、ハリー、ハリー!」

そう言うとこの吸血鬼はDIOの口に無理矢理輸血パックの中の血液を流し込んだ。

「が、がぼ……、貴様ァ!何のつも…」

DIOは叫びかけたその動作を急に止めた。

何かが体の中で変わったのである。

たとえれば黄金色の糖蜜の中に漬かっているようなそんな感じである。

「な、何だこの感じは…」

「おまえはめでたく太陽によって滅びなくなった、それだけだ」

そう言うとこの吸血鬼は去ろうとした。

「待て。特別にこのDIOが貴様の名前を聞いておいてやろう、名を名乗れ」

この吸血鬼は感心したような顔になり、そして顔をほころばせながら言った。

「アーカードだ、覚えておくがいい」

そう言い残すと今度こそ完全にDIOの部屋から去った。

「アーカード…、この借りは絶対に返させてもらおう」

そう言うとDIOは外への扉に一歩踏み出した。

 

 

第十四話 下

 

作者です。大変遅くなって申し訳ございません。

第十四話下をお楽しみください。
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 DIOが完全体(?)になっていたころ、諸葛孔明は次なる小作戦をジャイアンとスネ夫に言い渡していた。

「あなた方お二方に各界からの精鋭を集めた選抜隊と共に東京要塞へ突撃していただきます」

 こんな、かなり簡略化してである。

「ウオオオオオオオオオオオッ、やる気が出てきたぜええええっ!!」

ジャイアンは聞いた途端に雄叫びを上げたが、スネ夫は別の意味で雄叫びを上げていた。


「適当すぎだろおおおおおおおおっ!!」

「おや、納得できませんでしたかな?この説明で」

孔明は不思議そうな声でスネ夫に聞き返した。

「手段は?日時は?人数は?」

 スネ夫も必死である。そりゃあ、人生がかかっているからね。

「手段は陸路を起動砲システムで、日時は今すぐ、人数はあなた方を含めて十五人で」


孔明もさっさと答えた。

「何で陸路?それに起動砲システムって何?」

スネ夫も必死の形相でさらに問いかける。

「陸路の理由はこれからの作戦上やはり空路だけでは

 いつ落とされるかわからないのでその手段の獲得の為です。

 また、起動砲システムとは兵員輸送用装甲車に戦車砲を載せた兵器です。

 機動力は高く、攻撃力も兼ね備えた優れものです」

スネ夫はここで少し表情が青ざめた。

「まさか、それ一台だけで突撃とか言うのでは……」

孔明の顔がここでぱっと明るくなり、

「そのとおりです!」

とさも嬉しそうに言い放った。

そして、その瞬間スネ夫は孔明を殴った。

「この人でなし!」

ヒュッ   ドサッ

孔明はこの一撃で宙を舞いそして床に倒れた、がすぐに起き上がり。

「痛いじゃないですか、しかも私の新品のスーツが汚れてしまったではありませんか!」

余談だが、このとき孔明が着ていたスーツはジャイアンロボで着ていたものと同じである。

「うるせえええええええっ!こちとら命懸かってんのに何で一台だけで突撃だ!

ただの自殺だろ、これ」

スネ夫はもはや激昂して、厭味口調など忘れているようである。

しかし、孔明は穏やかな口調で

「だから選抜隊なのです。

 この選抜隊は各界の特に戦闘力の高い者を集めています、しかもシールドを張れる人物も同乗させています。

 さらに、出撃の際には長距離砲による援護射撃を始めとした火砲による弾幕と制空部隊による援護爆撃にて
相手側に頭を上げさせません」


ここでようやくスネ夫の顔も安らぎを少し取り戻した。

「りょ、了解しました」

話が終わるのを待っていたのか、ジャイアンはスネ夫の手を掴み、

「よし、いくぞおら!」

と言い、走っていった。

「ちょっとジャイアン、どこに行けばいいかわかってるの?」

「そんなの知るかぁ!俺の感だ!」

そうして、走りすぎてゆく二人を見ていた孔明は

(まあ、車両が破壊されても彼らなら内部に進入できるでしょう)

とろくでもないことを考えていた。

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そして、選抜隊が集まっている格納庫。

「これ、部隊として統率できるの?」

 スネ夫の第一声がそれである。

何故かと言えば、そこにいたのはDIO、アーカード、アンデルセン神父、セフィロス、

衝撃のアルベルト、素晴らしきヒッツカラルド、範馬勇次郎、江田島平八、静かなる中条、先生、

レオン・S・ケネディ、スネーク、スネ吉だったからである。

正直に言ってこんな部隊が統率が取れれば世界平和も夢ではない。

我がとてつもなく強い集まりでありすぎるからだ。

しかし、ここでスネ夫は疑問をすぐに口に出した。

「何でスネ吉兄さんがいるの?冷やかし?」

普段尊敬している人に向かってこの言い草である。

もはや濃縮スネ夫である。

スネ吉は顔色一つ変えずに答えた。

「スネ夫君、僕が強く描かれている作品があるだろう?」

スネ夫はそこではっと息を呑んで、答えた。

「まさか、『のび太戦記』のこと?」

「大当たり!いやあよく当てたねえ、僕かっこよかっただろ?」

スネ夫は少しキレ気味で答えた。

「ただでさえ、サイトが消えたりしてあの作者の方が大変なのに

 さらに問題を増やすなあああっ!」


「いいじゃないか、出ちゃったんだし」

スネ吉は嬉しそうにいった、がスネ夫は頭を抱えながらこう思っていた。

(この作者がどうか地獄に今すぐ落ちますように)

 ようし、決めた。スネ夫には理不尽なシチュエーションを与えよう。

ん、何だ後ろから肩をたたいているやつは?

何をすくぁwせdrftgyふじこ

申し訳ございません、嘘です。そんなふざけた真似はしません。

 



アルベルトが少し息を上げて立っていた。

一歩も動いていないはずなのに。

「アルベルトさん、どうしたんですか?」

スネ夫が心配そうに言った。

「なあに、心配することはない。馬鹿を少し粛清してきたところだ」

「はあ…」

こうしてこの部隊の出撃準備が整ってゆく。

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 ところかわり、東京要塞司令室

「君、量産型はもう見飽きたよ。もうそろそろ新商品を投入しようじゃないか」

オペレーターはぎょっとした顔で総理大臣を見た。

「あ、あれはこの先の第二次大東亜戦争で投入するはずなのでは…」

総理大臣は不満そうな顔で、

「実戦テストをしなきゃ意味ないだろう?

しかもそれで改善点も見つけられるし、やつらに一泡吹かせてやれるし一石二鳥じゃないか」

「し、しかし、もしものことがあったら…」

「そのときはこの帝都から陛下をお連れして、帝都ごと吹き飛ばせばいい。

データはコピーしていけばいいだけじゃあないか」

オペレーターは泡を食ったように言った。

「そ、そんな、東京を消すのですか?」

「何を驚いているんだい?帝都は我々以外はもはや無人だ、吹き飛ばして何が悪い」

「しかし、諸外国につけこまれるのでは?」

「馬鹿だなあ、そんなときのB.O.Wとアンブレラじゃないか。

そんなときはちらつかせればいいんだよ、経済崩壊と生物兵器の魅力を」

 総理大臣は何かが満たされたような顔になっている。

反面オペレーターは顔が曇っている。

(そんなにうまくいくのか?どうも総理は妄想癖がひどい…)

「じゃあ、投入しようよ、テイロス改と究極生物第二段『機械と恐竜の融合体・ヘルズレックス』を」

「りょ、了解しました。

 生物兵器格納庫LEVEL5管理官に下命、テイロス改及びヘルズレックスを吸血鬼に放て。

繰り返す、テイロス改及びヘルズレックスを吸血鬼に放て」

 

 

こうして、東京要塞にまた恐怖が解き放たれた。




未来はどうなるのか?

続きは第十五話へ

それでは皆さん、ごきげんよう

To Be Continued...

 

 

第十五話

テイロス改は目覚めた瞬間に敵となるべきものたちへの激しい感情を覚えた。

それは極論すれば愛であり、憎しみであった。

そして、同時にその感情を分かち合うべき者の目覚めにも気づいた。

だが、彼は少しおかしかったようだ。

彼らを起こしてくれた研究員をいきなり襲い始めたのだ。

研究員の責任者とも言える男が、今にも死にそうな声でつぶやいていた。

「まさか、独自の思考を持っているのか…、制御が利かないまでに…」

また、別の者が通信機に向かって叫んでいた。

「今すぐ救援部隊を!このままでは研究員は全滅してしまう!

今すぐ救援部隊をよこせ!」

テイロス改は自分のやるべき最初の仕事を察知した。

それはこの研究員たちの救済であると。

つまりは暴れている自分のパートナーを殺すことであると。


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ヘルズレックスは目覚めた瞬間に自らに課せられた任務を知り、無視した。

自分の闘争本能がそれを許さなかったのであり、自分の思考もそれに達した。

自分より先に目覚めた奴が任務に忠実になろうとしていると知ったときには、

 そのあまりもの無知さ加減にパートナーの即刻殺害を決定した。

そして、眼下にいる人間たちを見たとき、とめどない怒りが湧き上がった。

こんな力もない、知能も低い醜い猿に自分が創り出されたというのは屈辱であった。

 だから皆殺しにしてやると誓った。

そして、創り出されたすべてのB.O.Wも皆殺しにすると。

 知能の低いものに従う者など不快以外の何者でもないからだ。

だからまずはここにいる人間と向こうにいるテイロス改である。

彼は一歩前に踏み出し、まずは、にやついている顔の人間を食い千切った。


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研究所は血の臭い、悲鳴、銃声で満たされていた。

ヘルズレックスが目覚めたとたんに研究員を襲い始めたからである。

研究所つきの警備員総勢十名が必死の形相で短機関銃を

ヘルズレックスに向けて撃っているが、ヘルズレックスは避けもせずに周りにいる人間を襲っている。

「何てことだ…、奴には聞いてないのか?」

「誰かグレネードを持って来い!このままじゃ埒が明かない」

だが、そのとき主任研究員が文句を言った。

「グレネードを使うなんて何を考えているんだ!

そんなことをしたら、器具や培養中のB.O.Wが破壊されてしまうではないか!」

「しかし博士、このままでは全滅します」

「何を言っている、データとこの私が生き残ればこんな研究所にはもう価値はない。

 だから、さっさと私を連れてエレベーターに乗るんだ!」

 警備員たちはこの研究員の言葉に絶句し、一人が造作も無く拳銃を彼に向けた。

「な、何をする気だね?私を殺してただで済むと思っているのか!」

 研究員は言葉こそ先程のままだが、顔は青く震えていた。

「アンブレラ社生物兵器開発局規則第一条第十五項違反によりあなたを粛清します」

 警備員は感情も無く言い放った。

「待て、私が悪かった。話そう、そうすればわかってくれるだろう。

金をやろう、君らが望む額をだ。いくらほしい?」

 だが、警備員は気にも留めずに引き金に手をかける。

もう片方の手では短機関銃をヘルズレックスに向けて撃ちながら。

「た、頼む、殺さないでく」

ダーンッ

引き金は引かれ主任研究員は結局言葉を言い切ることも無く、

 彼の脳漿を床にぶちまけてこの世を去った。

「早くグレネード、そして89m無反動砲を持ってきてくれ」

「了解」

主任研究員の遺体には目もくれずに、一人の警備員が武器庫へ向かった。

そして、ちょうどテイロス改も動き始めた。

「畜生!敵がまた増えた」

そう、一人が言ったが、その直後に信じられない光景を見た。

なんとテイロス改が研究員をその広い手でやさしく掴み、エレベータのある場所まで連れてきたのだ。

そして、ヘルズレックスの元へ駆け出した。



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ヘルズレックスはテイロス改の行動を見たとき失望した。

自分のやっていることを見れば、きっと同じ行動をすると思っていたからである。

彼は無能を嘆き、無能の存在を激しく憎んだ。

だが、それまでだった。

どうせテイロス改はすぐに任務で向かうであろうと。

そう思い、また人間を食い千切ろうと口を開いた瞬間頭を殴られて吹き飛ばされた。

 頭を上げた先には、テイロス改の姿が映っていた。

脳が沸騰しそうな怒りに包まれた、だが、同時に痛みが理性を保たせた。

そして、彼は結論を導き出した。

テイロス改はここにいる人間たちのようにあっさりと殺すのではなく、

 じわじわと痛めつけて殺すと。

彼は立ち上がり、今から殺す相手を見た。

そして思った、なかなか楽しめそうな相手であると。

彼は雄叫びを上げて、テイロス改へと向かっていった。



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テイロス改は思う、自分の本当の任務とはよき人間を守り、

それに仇なすものを排除することではないかと。

ならばまずはこのヘルズレックスを排除しようと思う。

 そして次は…、次は自分の目で見て頭で判断しようと思う。

そうするためには目の前にいるものを排除しよう。

 ヘルズレックスが突進してきていたので、テイロス改はジャンプをした。



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ヘルズレックスは驚いた、テイロス改が突然ジャンプをしたことに。

 だが、どうせ奴はそれまでである。

彼はすぐさま、パンチを繰り出すためにテイロス改がいるであろう方向に体から触手を伸ばした。

 しかし、すべての触手が空を切った。

 彼は本来あるはずの鉄の板を破り、その肉を貫く感触が無いことを不思議に思い、
顔をその方向に向けた瞬間に背中に背骨が砕ける痛みと触手がちぎられる痛みを感じていた。

 テイロス改は空中で方向転換をしていたのであった。

馬鹿な、とヘルズレックスは思う。

たかだかテイロスを改造しただけのつまらないB.O.Wが自分の背骨を折り、触手をちぎったのだ。

 このまま自分はむざむざ殺されるのか、と彼は思う。

だが、それは絶対に否であるとも彼は思う。

それは絶対に自分には許されないことである。

改造しただけのB.O.Wに殺されるわけにはいかない。

そう、彼の元となったT-REXの本能が告げ、彼を彼たる者に仕立て上げたウィルスも言った。

彼は立ち上がり、テイロス改の肩を食い千切るために口を開けた。



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テイロス改は口を開けたヘルズレックスにさほど驚きもしなかった。

そのままヘルズレックスの突進の力を利用して裏拳を腹部へと叩き込んだ。

今度は起き上がれないように叩き込んだ後に、

もう片方の腕で尻尾を掴み床にたたきつけた。

ヘルズレックスは悲鳴を上げ、口から血を吹き出した。

だが、テイロス改は攻撃をやめるつもりは無い。

ヘルズレックスは研究員を一方的に殺したのである。

次に、ヘルズレックスが暴れた際に崩れた壁を構成していた鉄骨を手に持ち、床まで貫通するように腹部に突き刺した。

そして、死なない程度に拳を腹部に叩き込む。

ただし、叩き込むたびに骨が砕ける音が響く。

ヘルズレックスの息が絶え絶えになってきたころにテイロス改は慈悲をやろうと思い、拳を大きく振り上げた。



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自分はもう死ぬのか、とヘルズレックスは思っている。

突き刺された鉄骨に内臓のいくらかを破壊され、その後のテイロス改の攻撃により骨と内臓が破壊された。

そして、テイロス改は自分の頭に向かって最強の一撃を叩き込もうとしている。

このまま殺されるわけにはいかない、と彼は熱望する。

そんな彼の願いを聞き取ったのか、彼の体に変化が訪れ始めた。

破壊された骨や内臓がより強く再生し、肉体もより筋肉質に、より破壊的になっていく。

 勝てる、彼はそう思った。

彼はテイロス改が自分に一撃を叩き込む前に太く協力になった腕でテイロス改を殴った。



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テイロス改は鉄板をも貫く痛みを激しく感じていた。

あの状態でヘルズレックス内のウィルスが活性化したのだ。

 そして思う、勝てないと。

おそらく彼は自分が起き上がる前に自分を食い千切るのであろう。

自分はそれに反撃もできないのであろう、と。

そうあきらめかけたとき、ヘルズレックスの背中で爆発が起こった。

テイロス改がその先にいるものを見たとき驚いた。

 遥かに弱い人間がロケット砲とグレネードランチャーでヘルズレックスに立ち向かっていたのだ。

彼はまだ自分があきらめるわけにはいかないと立ち上がった。


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「あの機械の巨人を絶対に殺させるな!俺たちでなんとしても食い止めるぞ!」

「了解!」

警備員たちは士気が上がっていた。

 目の前で人間を救うために戦ってくれているB.O.Wのため。

「しかし、このままでは明らかにヘルズレックスが勝ちます」

「ならばたしかテイロス改用の武器があったはずだ。

テイロス改の培養容器のそばに」

「そんな、たどり着く前に殺されてしまいます」

 しかし、そこにエレベータに向かう研究員の一人が助言を与えてくれた。

「確か、そこにあるコンピューターで武器を出せるはずです。

私がやりますので時間を三十秒ほど稼いでください」

「ああ、わかった」

研究員、警備員の顔共に何かに満たされていた。



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 ヘルズレックスは悩む、人間とテイロス改どちらを先に殺そうかと。

どちらも今の自分ならばすぐに片付けられる、だからこそ悩む。

 そのためにとまろうと何も問題はない、なぜなら自分の体はそう簡単に致命傷を負うことも、

ダメージを与えられることもなくなったからだ。

 だからこそ悩む。

そして結論を出した。

 かわいそうだから三分間待ってやると。



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「あいつ、いきなり止まったぞ」

 ヘルズレックスが向かってくると思っていたため

 突然止まったことに警備員たちは驚いた。

だが、研究員が操作をしていたパソコンのディスプレイにいきなり文字が割り込んだ。

『三分間待ってやる。その間せいぜい私を楽しませてくれ。

 君ら下等生物の抵抗を楽しませてくれよ。この究極の生物である私に』

紛れも無いヘルズレックスからの文面であった。

「これがT、G、T-Veronica複合ウィルスの力…。なんという知能…」

 研究員は感嘆とも取れる声を出していた。

「こいつが完全にコントロールできれば世界地図が変わるんだろう…」

だが、研究員は操作を再開した。

「だが、操れないB.O.Wはただのウィルスの温床と危険物に過ぎない。
 ならば片付けよう」

コンピューターから電子複合音声が研究員に告げた。

『解除には主任研究員の許可が必要となります。

主任研究員のIDカードか目での認証をしてください』

研究員はパニックに陥った。

 このような事態はこれまで無かったし、しかも先週までは一般研究員でも解除できていたのだ。

ここでアンブレラ社の社内規則の変更があったということをこの研究員は知らなかった。

だが、ふと今まで気づかなかった血だまりに目が行った。

普通なら吐き気がするようなその血だまりに研究員は希望を見出した。

(たしか、こいつは主任研究員の一人…、人格では最低の奴だったな。 だが、主任研究員ということはたぶんIDカードを…)

と、考えを巡らせているとふとその男の右手にIDカードが握られていた。

幸いなことに血もついておらず、すぐに使えそうである。

「あんたも、人の役に立つことができるんだな」

そう言ってIDカードを手から抜き取り認識部分にかざした。

『源 政重  主任研究員  テイロス改専用兵器開放します』

ビーッ ビーッ ビーッ

『テイロス改専用兵器放出 安全のため研究員は周囲二十m以内から退避して下さい。
 安全のため周囲二十mから退避して下さい』

ガーッ   ガコン  

機械的にするすると壁が降り、中から洗練された形の銃が出てきた。

メタルの輝きと美しい曲線美を持った、神話に出てきそうな銃が。



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テイロス改は銃が出てくるのを見ていた。

 たしか、あの銃は自分専用に作られたものだと頭に埋め込まれたチップが教えてくれる。

だが、こんな状況で勝手に出てくるはずも無い。

そしてまた、あの人間たちを見遣った。

彼らがどうやら武器の封印を外してくれたらしい。

 ならば感謝して使おう、彼らが自分のために必死で出してくれたであろう武器を。

テイロス改は静かにだがしっかりと武器を担いだ。



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ヘルズレックスは一部始終を見ていたが、笑いが漏れそうになった。

 人間ごときがB.O.Wの恥さらしのような奴のために作った武器など自分には利くはずも無いからだ。

俺はほかのB.O.Wとは違う、俺は究極生命体だ、生けとし生けるすべてのものの頂点に立っている。

 その俺がたかだか改造B.O.Wに殺されるなどありえない。

だから俺は三分間猶予をやるのだ。

無駄に抵抗させ、その非力さを後悔させその後悔のまま殺すために。

 だから抵抗を楽しむ、哀れな下等生物たちの抵抗を。

だからテイロス改の武器の攻撃も受ける。その武器の非力を証明してやるために。

だからさっさと俺にそれを打ち込め!そして落胆し絶望せよ!

そのまま俺が片付けてやる。さあ、hurry hurry hurry!

 彼に向かって白い慈悲の光が放たれたのはそのときであった。



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それは一瞬の出来事であった。

テイロス改が引き金を引いたとたん白い光が銃口から飛び出し、ヘルズレックスの腹部から下を一気に消し去ったのは。

ヘルズレックスはその顔に死の恐怖を刻みながらもその体で戦おうと口を大きく開けた。

だがそのときには次の光が発射されていた。

 そしてその光はヘルズレックスの残った上半身さえも消し去ってしまった。

たった一瞬で究極生物第二号であったヘルズレックスは消え去った。

 ただの一瞬で。

そのときコンピューターに武器についての説明が映されていた。

 



『対究極生物兵器用電子加速式ライフル (グングニル) 

開発担当:木島 剣(アンブレラ持ち株会社社長及び委員長)

究極生物兵器の暴走の際に健全な状態のテイロスに装備させ暴走生物を消し去ることが主目的。

ただし、通常戦争兵器としても十二分に運用可能な破壊力を持つ。

Data

初速 2768m/s

威力 暴発した際に第七兵器研究所敷設治安部隊基地を土地ごと消滅

補足 電子加速で高威力を誇っているが、もし究極生物兵器が耐えた際の対策として、

    対消滅反応を起こす物質を弾頭に使用

以上の項目は実験が完全に済んでいないために未だ調整中である』



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 ヘルズレックスは自分がすべてを過小評価していたのだと撃たれてすぐに気づいた。

だが、そのときにはすでに立ち上がる足も無ければ冷静な考えも無かった。

 ただ、目の前にいる機械の巨人を消し去ることのみを考えていた。

しかし、それも次の光の発射でままならなくなってしまった。

そ して消え去る刹那の間にあることが頭をよぎっていた。

俺は井の中の蛙、所詮は外を知りもしなかった……。



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「いやあ、楽しい見せ物だったなあ。こりゃあ期待できるね、テイロス改」

 総理大臣は嬉しそうに、本当に嬉しそうにしゃべっている。

それに比べてオペレーターは顔面蒼白である。

「そ、総理、ヘルズレックスが消滅したのですよ。 いったいこれからどうするつもりなのです!

 新商品をプレゼンテーションに運ぶ前に破壊されるなんて!アンブレラの信任が崩れれば我々も終わりですよ!」

総理は別に声も荒げないで嬉々として答えた。

「何をそんなに喚いているのだね。また作ればいいだけじゃあないか。
 データは残ってるし、研究員もいくらかは生き残っているんだろ」

「しかし時間がありません。この戦いはおそらく向こう二ヶ月以内には決着がつきますが、
 第二次大東亜戦争まではよくても半年しかありません。

ヘルズレックス一匹をあそこまで育て上げるのに一年かかったんですよ。

半年じゃあせめて制御不安定な劣化型ができるのが落ちです」

 それでも総理大臣は気にもかけない様子でオペレーターに聞き返した。

「ならT-REXの製造にはどれくらいかかる?
 質の投入ができないのなら、ある程度の能力で数を投入しなきゃならんだろう」

「確かにT-REXは三ヶ月でものになりますが、こちらの被害を考えるととても現実的とはいえません」

総理はならばという顔でさらに聞いた。

「ならあのレールガンを量産しようじゃないか。

 威力も確認できたし、うまく制御できてるみたいだからね」

 オペレーターはもはや青くなれないまでに青くなり言い返した。

「あのレールガンの製造工場は一月前にエネルギーの漏洩で爆発し、

 以後の量産が延期になったのは総理もご存知でしょう」

総理大臣はつまらなそうな顔になり言った。

「仕方が無い、イワン改良型とテイロス改の量産を最優先にしてくれ。それから、練馬区への絨毯爆撃の用意と正確な敵施設の配置を」

オペレーターは少し顔色を取り戻し答えた。

「それならば何とか可能かと…。 絨毯爆撃は許可があればいつでも可能です。
 そして敵施設の配置ですが」

ここでオペレーターはにやりとした。

「あちらのMという女性から正確な図を頂きましたため完全に把握しております。
 あとは総理のご決断を待つのみです」

総理大臣は子供のような無邪気な顔になり言った。

「よし、出撃命令だ。練馬を火の海に!戦果を挙げ、奴らに後悔させるのだ!」

「フフフ、了解しました。

東京要塞司令室より青森航空自衛隊大型爆撃機基地へ

コードネームXX発動 繰り返すコードネームXX発動

状況を開始せよ 状況を開始せよ」





Mとはいったい誰なのか?

練馬は火の海になってしまうのか?

次回へ続く!

To Be Continued...

 

この話は続きます。

 


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