かけがえのない日常

それは時としていきなり崩れ去ることがある

時の流れのせいなのか?

それとも、差し伸べた右手のせいなのか?

 

黒幕

抹消さん

一日目 ●月14日 日曜日

今日、僕はドラえもんとともに隣町の大きなショッピングモールにいた。

どうしても欲しい手塚治のマンガがあったからだ。

ショッピングモールに入って、まず僕たちはエスカレーターに乗り3階にある本屋へと足を運んだ。

いろいろ探したが、結局本が人気過ぎて完売していたらしい。

せっかく隣町に来てあんまりだった。

とりあえず僕らはせっかく来たのだからショッピングモールを散策することにした。

僕らの町には売っていない文具(あんまり使わないけど)やなんかのポスター、季節外れの兜が置いてあった。

そうこうしているうちに空が暗くなる。さすがに門限に遅れそうなので、僕らは帰ることにした。

「求めてたものはなかったけど楽しかったね。」

僕はドラえもんに今日の感想を述べていった。

「そうだね、結構散策するのも悪くないね。」

「ああ、そうだ。」

大ホールまで歩きつき、そこにあったベンチに座り、散策疲れの足を少し休ませる。

「さてと、もう何も用事はないね。」

僕はドラえもんに聞くとドラえもんは頭を下げた。

「それじゃあ帰るか。」

すぐさま立ち上がり、自動ドアの前まで行く。自動ドアに透明な扉がオレンジ色に輝く。

今日の終わりを感じむなしい気分と明日の学校のかったるさを考えた。ドラえもんはそれを察したらしく、

「またジャイアンたちとでいこう。」

僕を励ましてくれて、僕はそれを笑顔で返した。

自動ドアに入ろうとした瞬間僕は大事なことを思い出す。

「しまった、財布落としちゃったよ。」

ドラえもんは半分呆れ顔でそしてくすみ笑いをしながら、

「先に僕いっとくから。」

といい、自動ドアを通る。

ここまではいつもの風景だ、真っ黒の分厚い鋼鉄製の自動ドアがドラえもんを押しつぶすまでは・・・・・・

 

午後五時

「え…な、こ………」

声がまったくでなかった。いや出せなかったんだ、現実を言うのが怖くて。

突如あらわれた黒く分厚い鋼鉄がショッピングモールを覆い、漆黒の世界へといざなう。

ショッピングモールの元からついてたライトが妖しく光出す。

そして、人々が次々とおびえ始め、脱出を試みようとするものもいれば、助けを求める人間もいた。

僕はしゃがみ込み、ただただ半べそをかきながらドラえもんの残骸を拾うことしか出来なかった。

すると、ドラえもんの残骸の周りに僕と同じように回収する人間がいるではないか。

そんな物好きは誰だろうかと顔を見てみたら知っている顔であった。

「のびた君、安心して、僕は何も聞かないよ。」

その顔は出木杉だった。

僕の心を察してくれたみたいだ、学校ではあんなにねたんでいたやつだが急に頼もしくなる。

「ありがとう。」

僕はそう呟き彼とともに残骸を集めた。

 

午後七時

何とか残骸を集め終わった。

僕らはここからどうやって逃げ出すかを討論し始める。

「みんな一箇所に集まっているが、こんなのどう見てもおかしい。」

「それはわかっているよ。僕はここから出るためにいろいろ動くべきだと思う。」

僕は彼の言葉に同意する。ここから何かしないとやはり駄目だ。雛鳥みたいに親鳥の帰るのを待っていては確実に餓死してしまう。

「それは僕も思うが、ただ闇雲に動いても駄目だろ。」

「それはいえる。だから僕たちは非常口あたりをすべて調べるべきだ。」

「それじゃあ、早速行こうか。」

僕たちは立ち上がり、まずは地下駐車場の出入り口を調べることにした。

「ライトを何とかしないと。」

「それならそこにある店のを借りるしかないな。」

「それって泥棒じゃ…」

「この際仕方がないよ。」

なんか、優等生のイメージがとってもサバイバーで野性的に見える。なんつーか人ってものはフレキシブルだな。店には誰もいなかった。

僕らはいつもどってくるかわからないのでライトを二本結構高めのものと単3をポケットに詰め込んだ。

「さすがにやりすぎだと思うけど。」

僕の言葉を無視して彼は地下階段から降りていった。

ここにもまだ電力供給が届いていたらしく、いつもと変わらない光を浴び、妙に心が落ち着いた。

「ここが駐車場だ。」

出来杉はドアノブに手をかける。正直このドアを開けるのは僕の野性的な間が余り推奨しない。

なぜだろうか、ここの光を失うのが怖いのだろうか?

「ライトの用意をしてくれ。」

僕は彼の言われた通りにドアに向かってライトを照らす。

そして彼はドアを開けた。

 

午後八時

出来杉は駐車場へと続く道を開く。

その道はなんとも血生臭いにおいが充満していた。

「なんだこのにおいは!」

出来杉にもライトを渡し、僕らはあちらこちら光を当ててみた。すると、奥のほうから水が滴る音がする。

突然大量の水がこぼれたり、何も音がしなくなったり、とっても不定期だ。コレはおかしすぎる、そして何より危険だ!

出来杉もそう思ったらしく、アイコンタクトでここから立ち去ろうとした。僕らは後ずさりをしようとしたら何かにつまずいて尻餅をつく。

そして手からライトが落ち、その滴る音の音源を照らしてしまった。

「ぎゃぁあああ!!」

そこには上半身が裸でその肌には真っ赤な血が付いているかなり体格のいい男が30位のおっさんの腸をむさぼっていた。

男は光におびえ、その場から逃げ出し隅に隠れる。

そして、僕らの元へ走ってくる音がした。

「早く逃げろ!!」

僕らの立ち居地はまだ扉の近くだったのだ。

すぐに僕らは入り口に入り、ドアに鍵をした。

「やばいよ!いったいどうなってんだ?」

「知らないよ!今は何とかここを防ぐしかない!!」

扉の近くにあった清掃用のモップを立てかけ、後二つを槍のようにもちかえた。

「きた!!」

さっきの男がドアを叩く音がする。

その音はどんどん強烈になっていき、男の妙な叫び声も聞こえてくる。

その音に便乗し、立てかけといたモップにひびが入り、扉にへこみができてきた。

「戦うしかないみたいだ!用意はいいな!!」

「ああ!!」

僕は覚悟を決め、立てかけたモップに向かい、モップの柄の先を向けた。

「があああああああ!!」

男がそう叫び終わるとモップは割け、扉が大破した。

「まだだ!!」

男はその大破した扉を踏みしめどこからか拾ってきた鉄パイプをぶら下げゆっくりとこっちに顔を向ける。

「いまだ!!」

僕は腹をそして出来杉は目を突いた。

 

午後八時三十分

出来杉の攻撃は左目をつぶし、僕の攻撃はその血まみれの男を吹き飛ばした。

だが、僕の槍は腹筋に刺さり、なぜか抜けない。

僕はあせり、何度も抜こうとしたが、正気を取り戻した男にモップの柄をつかまれ、それを上に払い僕の背中に電灯が当たった。

「いでぇえええええ!」

背中には電灯のガラスとそしてその中に詰まった電気が体を傷つける。その傷口から少量の血と焼け焦げたにおいがする。

そしてそのモップを持っている手からゆっくりとずれ落ちていった。

「う、うぉおおおおおお!!」

出来杉は意識を取り戻し、次は僕のモップの柄をつかんでいる右手を狙う。

だが、そのモップの先も片手にとられてしまったが、僕の二の舞にならぬようにそのモップをわざと手から離す。

「くそ!!どうすればいいんだ!!」

と四の五の言っている内に血まみれの男がさっき奪ったモップで攻撃してくる。

ものすごい速さのスピードだが、出来杉の身体能力で何とかその攻撃をよけることができた。

だが、そうこうしているうちに僕の首を右腕でつかみ、首をへし折らんばかりに力を込め始める。

「ぎゃあああぁぁぁ…」

苦しい、首を絞められすぎて声が出ない。しかも涙が出てくる。口からもよだれが。

死にたくない…

「ちょっと待ってて!今ヤツの倒し方がわかったぞ!」

と、突然出来杉は叫び、さっき使っていたライトを化け物に照らす。

そうか、そういえばやつは光を嫌っていた。そして、階段の蛍光灯が照らせていない場所でしか動いていない。

「うごああああああ」

男の体が見る見るうちに溶けてきつい異臭を放つ。いや、何かがもげて行くような感じがする。

男は僕を地面に投げ捨てて駐車場に戻っていった。

「止めを刺しにいかなければ!!」

出来杉はそう叫び、ライト片手に駐車場へと向かった。

そして遅れながらも僕も片手にライトを装着し、彼の後を追う。

 

八時四十分

背中に刺さっているガラスを一つ一つ摘んでとってゆく。その一回一回がとてつもない激痛を呼び起こす。

しかも、電灯の電気もしくは熱でやけどしている。普通ここで経つことは難しいが、やはり出木杉をおいていくことはできない。

僕は遅まきながらもゆっくりと痛みをこらえ地を踏みしめながら歩いていった。


「はあ、はあ…食らえ!!」

血まみれの男は出来杉の追跡を逃れようと必死に奥へと走り、それを先回りした出来杉が彼の体を焦がしてゆく。

さすがに駐車場が広いといえどもやはり終わりがある。

駐車場の奥まで何とか追い込むことができ、とどめの光を浴びせまくった。

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

男の体はだんだん溶けてゆく。

男はもう叫びをあげることができないようになっていた。

「コレで何とか、後はのびた君を治さなければならない。」しかし、彼にはまだ疑心暗鬼名ところがある。それはさっき与えた傷跡のことだ。

実は今よく見てみると目がなぜか治っているのだ。

こいつには超回復能力がある。

まだよくこの生物については分からないが、多分そうだろうと確信した。

僕はライトで照らされこげ落ちた破片を探し、彼に追いつこうとした。

だが、妙なことに途中から足跡が出来ている。

その足跡が出来る前の地点を見ると、さっき腸を咥えられていたおっさんの死体があった。

「むごいことするな…とりあえず拝んどいてやるか。」

僕はその死体の前にしゃがみこみ両手を合わせて拝んだ。よく分からない、他人のおっさんにこんなことをするとは…

でも、それで彼が救われる気がした。

なんか、自分が生きていることが悲しくも思えてきた。

すぐに切り上げ僕はそのおっさんを後にする。

だが、僕の足元から気持ち悪い感触がする。

その足元を見れば腹の油と血液でべたべたの手が僕をつかんでいた。

 

八時四十五分

「ぎゃあああああ」

僕の足を掴む粘っこい手を幾度となく放棄でたこなぐりにした。段々なぐっていくうちに僕の足を掴む手はぼろ雑巾のように

なりもげ落ちてしまった。

「うああああああ!!!」

それでも恐怖感が自分の脳裏を襲い、手ではなく腹の辺りを殴りつける。そして上半身と下半身が見る見るうちに分かれていった。

「はぁはぁ…うぐ!」

それでもなお足を掴み続ける。もう訳がわからなくなった…

「コレでもう動かなくなったな。」

動かなくなったのを見計らい一回お辞儀をして頭を箒で叩き潰した。しかしとってもおかしい、たった一発でわれてしまったのだ。

「普通もうちょっと強度があるはずなのに。」

ライトで脳の部分を照らしてみる。本で見た脳とは違い、がりがりにやせ細った脳みそだった。

「一体どういうことだ?カラダに覆ってたコケみたいなのが栄養分を吸い取っているのか?」

頭蓋骨の方も見てみると、案の定根っこのようなものがついている。

「どうやらこの人たちは光に弱い植物の胞子にやられたと考えるしかないみたいだ。だが、なぜ?コレは新手のテロか?

東京の地下鉄での神経ガスみたいな物なのか?それにここにいたらヤバイ、即急に出て光を浴びなくては。」

あの男が垂れ流した血を目印に元の道をたずねていくことにした。

その道の間には延々となぐり続けておかしくなっているのび太君の姿が見えた。

 

八時四十九分

「ふふ…僕は人を殺したよ…」

ただ呆然と聞くしかなかった。なぜなら僕も人を殺したのだから気持ちは同じ…

「やあ出来杉そっちはどうだい?」

「何とか倒したよ、少し気持ちを切り替えたほうがいい。」

ただ冷静にこうとしかいえなかった。僕も心を切り替えているからだ。こうしないとやっていけない!人を殺すという禁断の道を

歩んだからだ!!

「そうだね、キミもつらいんだよね。僕だけがワーワー言ってたらダメだ。」

何とか心をもちなをしてくれたようだ。少し安心した。

とりあえずここから直ぐに出たほうがいいという説明をし始める。

「ここには人に寄生するかなり繁殖する植物系の種子がばら撒かれている。見たところ光に弱いみたいだ。

だから早く出てこの菌を消毒したほうがいい。あの人の二の舞になってしまう。」

それなりに理解してくれているようでのびた君も同じ意見だった。

「分かった、今すぐでよう!」

そして光のあるほうへと進む。

「ちょっと待て、君たちと話がしたい。この無線機と横にあるリュックを拾って光のあるところに移動してくれ。」

車と車の間から声がする。突然のダイレクトコールだ。

 

この話は続きます。

 

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