Nの悲劇2(リータンズ)
〜人生とは、無限の百苦タイマー〜

 

第4話 新たなる刺客! 出木杉ん家で血祭り

前回までのあらすじ(半年くらい間があいたので)

 N4と名乗る悪質悪辣な集団から脅しを受けるドラえもんとのび太。

9月3日が終わるまでにN4の正体を突き止めないと、その昔ドラえもんとのび太が封印した『百苦のスイッチ』を入れるという。

 ゲーム開始と同時にのび太が監禁されてしまうが、そこはドラえもんとノンちゃんの力でなんとか救い出すことに成功。
しかし、肝心ののび太をさらった相手に逃げられてしまう。

 そこに、味方になる形であらわれた出木杉英才。

 これで、一気に百人力!?

 

 

出木杉英才(以下出木杉)「なるほど」

 ここは、出木杉の家。 その部屋の時計の音が、チクタクと時を刻んでいた。 時計は、4時前を指している。

ドラえもん(以下ドラ)「そういうわけなんだ」

野比のび太(以下のび)「でもさあ、そんな嘘みたいなフワフワした話、出木杉は信じないよね」

 のび太は、必死で出木杉の顔色をうかがう。そして、出木杉は返事をした。

出木杉「ううん、事情はわかったよ。 僕も、手伝おう」

のび「早ッ! 飲み込み早いよ! 」

ドラ「まあまあ、そこがフィクションのいいところじゃないか」

 ドラえもんは、早速おなかにあるポケットから手紙と暗号を取り出そうとして――その手を、女の子の細い手が止めた。

 

ノンちゃん(最近、顔の肌がカシミール地方みたいになっている)だった。

 

ノンちゃん(以下ノ)「ドラちゃん! 私、なんだかこの人のこと信用できないわ!」

のび「そのとおりだよノンちゃん(展開ベタすぎるけど)! この男は、信用できないこと山の如しだよ」 

出木杉「のび太君、こういうときは弁解してくれないか……?」

のび「いいや、するねッ!(?) ノンちゃん、この出木杉君の趣味を知ってるかい?」

 のび太は、とりあえず呼吸をした。

ノ「!? 違法ダウンロード?」

のび「いいや、それよりも悪質や悪質! なんと、クラスの女の子のおふろを覗くことなんだよ!」

ノ「!? な、なんて陰湿で破廉恥なの!?(恥」

のび「それだけじゃない! しかも彼は、その女の子の前で裸になったことがあるんだ!」

ノ「そうなの、エロ杉さん!?」

出木杉「出木杉ですよ(泣 勝手に、朝○新聞の漫画っぽくしないでください……というか、何でいきなり僕のネガキャンが始まったんですか」

ドラ「のび太君、落ち着きなよ! それ全部、君のやってきた悪事じゃないか!」

のび「え? そうだっけ? あれ、突然記憶がなくな(ry」

ノ「と・に・か・く! 私は、この人の言う事っていうか、この人の気配が信用できないの」

ドラ「気配?」

ノ「そう。 なんか、得体の知れないオーラが出てるのよ、あなたから」

出木杉「ノンちゃん……。 君の言ってる事は、最近テレビで見ないスピリチュアルカウンセラーの言う事並に、支離滅裂だよ」

ドラ「出木杉君、分かりやすい例えアリガトウ(泣」

ノ「そ、その人と一緒にしないで!(汗 とにかく、私はあなたとは一緒にいられないわ! 気分が悪くなる」

のび「ぼ、僕もだよノンちゃん! さあ、一緒に静香ちゃんの看病をしよう。 確か、二階の部屋で休んでるんだよね?」

ノ「え? 誰の看病って?」

 ノンちゃんの足が、急に止まった。この時ドラえもんは、崖から滑り落ちた鹿を想像した。

のび「だから、静香ちゃんの看病……ん?」

ノ「の、のびちゃんのバカ――! もう、一緒にお風呂にはいったりしてあげないから!
  のびちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿! 蛆虫! ジゴロ! ボケナス! 余ったオセロのコマ!」

のび「の、ノンちゃん!?(オセロのコマって何?)」

 

 ノンちゃんは、突然顔を赤くして部屋から出て行ってしまった。

出木杉は、嵐が過ぎ去ったようなような感じがした。 ノンちゃんは一年前よりもパワーアップ!していたのである(迷惑度が)。

 きれいに物が片付けられている出木杉の家の一階の客間を見て、ドラえもんは余計不安になった。

ドラ「のび太君、君はとんだ阿呆だねえ。 女心ってのが、全く分かってないよ!」

のび「何が?」

ドラ「ノンちゃんはね、君のことが好きなんだよ!」

のび「知ってるよ。 僕も、ノンちゃんのことが好きだよ」

ドラ「そうじゃなくてさ……」

出木杉「のび太君、今のは君が悪いよ。 今すぐ、行って謝ってきなよ」

のび「はあ? なんで僕が悪いのさ? 」

出木杉「君が悪くないとはいえ、女性を泣かせるようなことは、あまりよくないよ!
     だから、行って慰めるだけでもいいと思うよ。

     ドラえもん君、あの女の子はのび太君のことが好きなんだよね? なら、なおさらそうすべきだよ」

ドラ「う、うん。 そうなんだけどね……(そうすると、かえって二人の仲が深まりそうな気がするし……うーん、複雑)」

のび「ノンちゃんは、僕の幼馴染さ! だから、きっと僕のこと分かってくれるよ! 今、僕には何が大切で、何が大切でないのかを!」

 ドラえもんは、ふうと深くため息をついた。

ドラ「じゃあ、君はノンちゃんが大切じゃないの?」

のび「大切だヨ」

出木杉「のび太君、行ってあげなよ」

のび「な、なんだよみんなして、僕が悪いみたいに!(泣 いいよ、僕も出て行ってやるよ!」

ドラ「いや、今君が一人でうろつくのは危ない! 前回みたいに、天井と合体したいの!?」

のび「いいよ、どうせ僕は死にはしないさ! どうせ、この話の主人公だし!」

 のび太は、のび太らしからぬスピードで部屋を出て行った。 それはまさに、ウサイン・ボルトさながらに。

ドラ「……(のび太君、君はどうして、たまにそんなリアルなことを言うんだ)」

出木杉「ドラえもん君、まさかそれもN4って奴らの仕業なの?」

ドラ「うん、多分ね。 どこの日常の世界に、小学生を殴打する大人がいるんだよ」

出木杉「ということは、その人もN4の一人ってことだね」

ドラ「そうなのかな……」

出木杉「N4といえば、あの漫画のF4になぞらえてるんだろうけど……」

 

その時だった。

『リリリン、リリリリン!』

 

 上の階から、電話のような音が聞こえた。 ドラえもんは、はっと出木杉を見た。

ドラ「あれは……?」

出木杉「部屋の電話だよ。前、僕がイタズラ電話に悩まされた事があっただろう? その時、一度見なかったかい?」

 ドラえもんは、出木杉が完全に話を終える前に、部屋を出て、上の階へ上っていた。

そして、ずっとなりつづけている電話のベルのする部屋のドアを開けた。

 と、同時に――電話のベルもやんだ。

ドラえもんは考えた。

 これは、どういうことなのだろうか。もちろん、他の人が電話を取ったってこともあるけど――他の人?

 

ドラえもんの目には、苦しそうに息をしながら電話に出ている静香が映った。

 ま、まずい! その電話は、多分また道明寺って奴からの連絡に決まってる!

 

源静香(以下静香)「もしもし、出木杉です」

?「誰ダイ、お嬢サン? 確カソノ家ニ、女ノ子ハイナカッタハズダケド……?」

静香「はい。 私は出木杉の家の人じゃないんです。 あ」

 静香は、すぐに部屋の入り口に居るドラえもんを見つけた。

静香「あら、ドラちゃん……。 お見舞いに来てくれたの?」

 ドラえもんは、すぐに顔を取り繕った。

ドラ「そ、そう! 静香ちゃんが具合悪いって聞いたからさあ。 僕のお医者さんカバンでチョチョイのチョイと……」

?「ホウ……。 ソコニ、ドラエモンガ居ルンダネ? ソレジャア、ドラエモント代ワッテクレナイカ?」

静香「あれ? 出木杉さんに用があるんじゃないんですか?」

?「イヤ、『ソコニドラエモンが居ル』ト知ッテテカケタンダガネ……クククク」

静香「そうですか、それじゃあドラちゃんに代わりますね。 あ、でもちょっと待ってください」

?「?」

 静香は、急いで出木杉の机の上にあったティッシュを、受話器の口にあてる部分にくっつけた。

そして、ドラえもんの方を見てはっきりと言った。

静香「ドラちゃん、この人誰? 変声機で声を変えてたけど……?」

ドラ「えーと、ドラ屋のご主人さんじゃないかな? 新しく入ったドラ焼きの話かな?」

 ドラえもんはできるだけ平静を装ったが、その挙動が不審なのは明らかだった。

静香「ふーん……その様子だと、あまりいい人じゃなさそうみたいね、この人」

ドラ「え、なんで分かったの!? あ(汗」

静香「……最近、タチの悪い犯罪が増えてるみたいよ。 ドラちゃん、まさかその類に巻き込まれてるんじゃないの?」

ドラ「そ、そんなことないよ!(汗」

静香「本当に?」

 静香は、受話器の口の部分をふさいだまま、ゆっくりとドラえもんに歩み寄った。

その目はまるで、容疑者を追い詰めるような、刑事そのものだった。

 ドラえもんが、これ以上は隠し切れないなー―そう思ったときだった。

 

また、大きな音が聞こえた。 今度は、一階のほうから。 ただし、今度の音は一つではなかった。

 

バリーン! キャアアアア!

 

静香「何、今の音? ゴホッ」

 ドラえもんの耳はあまりいいほうではないが、その音がガラスの音が割れる音、そして同時に人の悲鳴が重なったと結論付けた。

ドラ「静香ちゃんは、ここに居て!」

静香「ちょっ……! それ、どういうこと?」

 

ドラえもんは静香の質問には答えずに、一階に下りた。

 と、同時に――突然、目の前に少年が飛んで来た。 それは、極めて異例な光景だった。

そして、ドラえもんはすぐにその少年が出木杉英才だと分かった。

ドラ「大丈夫、出木杉君!?」

出木杉「わ……わが人生に一片の悔い無し!」

 そういうと、出木杉はぐったりと体の力がなくなった。

ドラ「出木杉君!?(汗 出木杉君、君は一体どうしてラオウのようなセリフを……」

 そのとき、ズルっとドラえもんの手がすべった。 出木杉の肩には、大きな三つの傷があり、そこからゆっくりと血が流れ出ていた。

ドラ「な、なんてこったい!(汗」

?「い、いやー! 英才、英才ィィ!」

?「ワンワンわめくな、親を守れない息子が悪いんだよ」

 ドラえもんは、すぐに出木杉が飛んで来たキッチンの方から、声がするのに気づいた。

ドラ「出木杉君、君はすぐに静香ちゃんを連れて逃げるんだ!」

出木杉「ドラえもん君、大丈夫! こういうときのために、お巡りさんに連絡して……」

 そういうと、出木杉はゆっくりと立ち上がった。

その瞬間だった。

 

ヒュッと音がした。 出木杉の体が、がくんと揺れた。 ドラえもんは、その一部始終をはっきりと見ていた。

 ぶしゅっ!

出木杉の背中に、さっきと同じような、三つの後がついた。 そして、ゆっくりと崩れ落ちた。

 

ドラ「で……出木杉君ッ!」

 ドラえもんは、急いで出木杉に駆け寄った。 息はある。 ドラえもんは、すぐにお医者さんカバンを取り出した。

?「余計なことすんなよ、アホ」

?「英才、英才ッ!」

 

 ドラえもんは、すぐに後ろを振り返った。

そこには、見たことのある『ネコ』と、見たことのない女性だった。

 それは、忘れもしないネコ。 かつて、異世界で激闘を繰り広げた、立って歩くネコ。
図太い声。 相変わらず、濁っている黄色い眼。 そして、意地の悪そうな歯。

ドラ「君は――ネコジャラ!」

ネコジャラ「ご名答! よく分かったな〜〜。 アホすぎて、覚えてないかと思ったぜ。

       ま、覚えてなかったら、すぐに叩き斬るつもりだったけどな、グフフ……」

女性「お願い、英才を助けて! 」

ドラ「分かってます、すぐに助けます!」

ネコジャラ「まあ、そう言うな。 負けた奴のことなんて、放っときゃいいじゃないか、な?」

ドラ「そんなことできるか! というか、何で君はここに居るんだ! タイムパトロールに捕まったはずじゃ……!?」

ネコジャラ「ああ。 俺は模範囚だからな。 すぐに出られたぜ」

 ドラえもんはこの時、日本の刑罰制度を思い出した。

ドラ「な、なんてこった……! キッドの奴、後で文句言ってやる!(泣」

ネコジャラ「まあ、そんなことはどうでもいいんだ。 俺は、お前ともう一度再戦できることを楽しみにしてたんだよ」

ドラ「ふざけるな! そんな君の自己満足の為に、他人を犠牲にしてもいいと思ってるのか!?」

 ネコジャラの顔から、急に笑顔が消えた。そして、急に耳をピンと立てた。

ネコジャラ「……自己満足? そうだな、俺はその『自己満足』とやらのせいで、ここに居て、『悪人』やってるんだからな!」

ドラ「何だと?」

ネコジャラ「俺は、人間を許さない……! 絶対にな! そして、その人間に媚を売ってるお前らもな!」

そういうと、捕まえていた女性を思いっきり突き飛ばした。

女性「キャッ!」

ドラ「ネコジャラ、関係の無い人は……!」

ネコジャラ「関係ない? この女がか?」

ドラ「!?」

女性「英才、大丈夫!? 英才!?」

 女性は、すぐに傷だらけの出木杉へ向かった。

 

ネコジャラは、右手の爪を出木杉の方に向けて言った。

 

ネコジャラ「この女は! このぼっちゃんの母親は、その昔に俺を捨てた張本人なんだよ!」

ドラ「な、なんだってーーー!?」

 ドラえもんは、すぐに女性を見た。 なるほど、この人は出木杉君のお母さんだったのか。
それにしても、ネコジャラを捨てたってのは――?

 

ネコジャラ「……なーんて、な!」

 ネコジャラは、動揺したドラえもんめがけて、大きく爪を振った。

 

同時に、ドラえもんの後ろにあった食器棚が大きく揺れた。

 

ドガッシャアアン!

 

ネコジャラは、自分の爪をなめながら言った。

ネコジャラ「俺は、昔の俺とは違う……。 俺は人間共に捕まる事で、元の憎しみも倍増させたんだよ!

       ドラえもん、今度こそ決着をつけようぜ……!」

 

がらがらと音を立てながら、ドラえもんは割れたお皿の山から出てきた。

 

ドラ「不意打ちとか、どんだけ卑怯なんだ君は!(怒) 僕がロボットじゃなかったら、今頃血だらけだよ!?」

ネコジャラ「いいじゃねえか。 まさに血で地を洗う戦いって奴を……始めようぜ」

静香「そうはさせないわ!」

ドラ&ネコジャラ「!?」

 

 キッチンの入り口に、源静香が立っていた。 さっきと同じようなパジャマ姿で(多分、出木杉から借りたと思われる)。

静香「さっき、110番したわ! さあ、今すぐドラちゃんから離れなさい!」

ネコジャラ「この小娘が!(泣 何、あっさり警察呼んでるんだよ!(泣 男同士の勝負を邪魔するんじゃねえ」

静香「男同士の勝負? そんなのはね、正々堂々と河原で勝負しなさい! こんな狭い所でやるものじゃないの!」

ドラ&ネコジャラ「す、すみません……」

 ネコジャラは、すぐに我に返った。

ネコジャラ「おい、小娘! 俺はな、お前みたいな世の中を何でも見透かしたような顔してる奴が大ッ嫌いなんだよ!」

静香「嫌いだったら何?」

ネコジャラ「嫌いだから! お前もこの男の子みたいに、ずたずたに引き裂いてやるっつってんだよ!」

 そういうと、ネコジャラはドラえもんにやったのと同じ要領で、爪を振った。

 

ザクッ!

 ドラえもんもネコジャラも、静香ちゃんも目を疑った。 出木杉の母も、目を疑った。

立ち上がった、少年の姿を。 女の子の盾になった、自分の息子の勇姿を。

 

出木杉「静香ちゃん……。 安静にしてなって言っただろう?」

静香「で、出木杉さん!」

 

ドラ「静香ちゃん! 」

 ドラえもんは、ポケットに手をつっこみながら言った。

静香「何、ドラちゃん?」

ドラ「ちょっと、男同士の勝負をしてくるよ……!」

静香「ちょっと待ってよドラちゃん! カッコつけたいのは分かるけど、このままじゃあ、出木杉さん出血多量で死んじゃう!」

ドラ「大丈夫。 お医者さんカバンで応急処置をしといて! その後、すぐに『援軍』が来るから!」

静香「え、援軍?」

ドラ「ああ。 心強い味方さ! 君は知らないかもしれないけどね――」

 静香はドラえもんの話を聞くよりも先に、お医者さんカバンで出木杉の処置方法を見ていた。

 

ネコジャラ「おう、打ち合わせは終わったか?」

ドラ「やろうじゃないか、ネコジャラ! 今度は、正々堂々と――!」

ネコジャラ「ああ。 望む所だぜ、タヌキ野郎……!」

ドラ「僕はタヌキじゃない、猫型ロボットだ!(怒)」

 

 

その頃、のび太は全然関係ないことで熱い激闘を繰り広げていた。

のび「うおー! そこだ、いけ、原!」

ノ「のびちゃん、ズルいわ! 私は江夏よ!」

 

のび太とノンちゃんは、町のゲーセンで野球ゲームをやって盛り上がっていた。

 

 

ネタ帳3 『わが人生に一片の悔い無し』

 漫画『北斗の拳』に出てくるラオウという男の、最期のセリフ。 かっこよすぎ。

 

キャラクターファイル3 出木杉の母

『ドラえもん』作中に、一度だけ登場。 『時限バカ弾:』の犠牲者。その時のセリフが凄い。

 

 

第5話 決戦! ドラえもん対ネコジャラ

前回までのあらすじ

 ドラえもんとネコジャラが戦うことに。 というか、ネコジャラは敵なのか?

そして、蚊帳の外の二人は――!?

 

 

 荒野(正確には河原)に佇む、猫型ロボットと猫。

カタンカタン、と近くににある鉄橋の上を列車が通り過ぎていった。

 そしてそれを待っていたかのように、一斉にドラえもんとネコジャラは動き出した。

 

ドラえもん(以下ドラ)「理由が何であれ、僕は君を許せない」

ネコジャラ(以下ネコ)「ああ、俺もだ。 俺は、常に自分の良心に従って行動してるからな」

 ドラえもんはすばやく、ポケットから『名刀電光丸』を取り出した。 柄の部分が、夕暮れの光を受けて、鋭く光る。

それに呼応するかのように、ネコジャラはさっきと同じように長い爪を光に照らした。

『ふな〜お』

 野良猫の雄叫びが、河原中、いやその辺一帯に響き渡った。

同時に――ドラえもんの自慢の髭が、ぷつぷつと音を立てた。 それが髭の切れた音と認識するのに、さほど時間はかからなかった。

 

ドラ「いつっ!」

ネコ「次は、『いつっ!』じゃすまねえぞ!」

 そういうと、ネコジャラはこちらに向かって走ってくる。 マズい! 頼みの名刀電光丸を、使う暇さえ与えられない!
あれ? というか、もう光を失ってる?

どうしてだ? どうして、ネコジャラはあんな離れた場所から攻撃できるんだ?

 爪! 爪を振っただけで、相手を傷つける? そんなこと、22世紀の道具を使っても無理じゃないだろうか?

22世紀?

 

ドラ「ネコジャラ! 僕はてっきり、君は私怨で僕を襲いに来たのかと思ってたよ」

ネコ「……?」

ドラ「でも、違うんだね、そうなんだねネコジャラ! 君は、『誰か』の指示で僕達を襲うように仕向けられた、そうなんだね?」

 刹那、ネコジャラが動きを止めた。 ドラえもんは、すぐに次の秘密道具を取り出した。

まずは、相手の動きを封じる!

ネコジャラ「違うな。 私怨だよ、ドラえもん。 間違いないぜ、百点満点の答えだぜ」

ドラ「嘘だ! 君の戦闘力は、以前とは比べ物にならないくらい強くなってる!

   でも、この強さは作られたものだ! 決して、君の力じゃない。君は、22世紀の道具を使ってるんだ! 違う?」

 

ドラえもんは言いつづけながらも、しっかりと照準をネコジャラに定めた。『瞬間接着銃』。

 

 ネコジャラは、ドラえもんよりも多いひげをピクつかせながら、少しずつ笑い出した。少しずつ、少しずつ。

ネコ「ああ。 俺は確かに、力を貰ったぜ。 ある男の力を借りてな」

ドラ「ある男?」

ネコ「それは、俺をのしてから考えるんだな!」

 ネコジャラは、ゆっくりと両腕を曲げた。 腕全体を使って、Tの字を作るように。

ドラえもんは、この時ロボットの勘というものが働いた。 次の一撃は危険だ。

 ドラえもんの瞬間接着銃の引き金を引く速さと、ネコジャラの爪を振る速さは、ほぼ互角だった。

 

しかし、その後の双方に与えた威力は、雲泥の差があった。

 

 ネコジャラの足元に、『ぶちゃっ』と音を立て、接着銃の放出した接着剤が付着した。

そして、向こうのドラえもん――の首輪は、ブチンと音を立てて千切れ落ちた。
それどころか、ドラえもんのポケットからの上の部位は、完全に外装のめっきがはがれ、中の金属の部分が剥き出しになっていた。

 

ネコ「勝負あったな」

 

 ドラえもんの耳には、ほとんどネコジャラの声は届いていなかった。

正直、左眼もほとんど見えない状態だった。

 ひらりマントさえあれば。 いや、もう左手自体機能してないから無理か。

でも、こんな時に限って修理に出してるんだよなあ。 本当、僕ってツイてない。

ネコ「お前は、喧嘩の仕方を知らない。 所詮、飼い猫だからだ」

 ゆっくり、ネコジャラが近づいて来る。 次の攻撃が来たら、間違いなく僕は壊される。

こんなに、命の危機を感じたのは、おもちゃの兵隊にとらわれた時以来だろうか。
 あの時は、のび太君が来てくれなかったら大変だったな――

アイツの『爪』がある限り、僕は道具をポケットから出す前にやられる。

 

ネコ「ドラえもん、何で俺はお前に負けたんだろうな」

 ネコジャラは、首をフリフリと振りながら、近づいて来る。

 

今しか無い。

 

ネコジャラの爪が、ドラえもんの肩に触れるか触れないかくらいのところ。

まさにその瞬間。

 ポケットから、大きな形のネズミ(やや、あのウォルト系)が飛び出した。

 

ドラ「ぎゅ、ギュワワワァァァァァ&$%#!」

 ドラえもんの体が、大きく飛び上がった。

ネコジャラは、なぜドラえもんがそんなことをしたのか分からなかった。

なぜ、この状況で自分の嫌いな物を?

 そして、すぐに気づいた。

それが、死ぬ間際の悪あがきではなく、勝ちにこだわっての布石だということに。

 つまり、ドラえもんは自分を奮起させたのだ。 いや、ただしくは『興奮』か。

どんなにボロボロで動けなくとも、条件反射的にドラえもんの体を動かせる事ができるもの。

 それはネズミを見ること――以外に、ほからならない。

ネズミを見れば、ドラえもんはそれから逃れる事以外考えられない、極度のパニック状態に陥る。

 だが、それが戦略的なものだとすればどうだ?

 

 

ネコジャラは、とっさに後ろに退いた。

その瞬間、ネコジャラの居た場所に、オイルらしきものが滝のように落ちてきた。

 

 ゴバシャァァァ!

 

ドラ「くそッ! 『天地逆転オイル』をまくつもりだったのに!」

ネコ「分かりやすい解説ありがとうよ!(誰に言ってるんだ?)」

ドラ「でもネコジャラ。 君、その『足元』は?」

ネコ「!?」

 ネコジャラの足元が、ずるりと滑った。 一瞬、ネコジャラ自身それがオイルによるものだと思った。

しかし、それはドラえもんがさっきまいた『天地逆転オイル』ではなかった。

 それどころか、もっとタチの悪いもの。

ずる、ずるりと奇妙な音と、猫には辛い、科学染料の混じったような臭い。

 

ドラ「テレレレレッテレ〜〜♪ ただの『ローション』んんん!」

ネコジャラ「お前、猫なめすぎだろ!?(汗 つーかお前、いつこんなものばらまいたんだ!?
       んなもん、すぐに抜け出せる……ん!?」

 

ドラえもんは、ニヤリと笑った。

ドラ「そうだよ、ネコジャラ。 日本のバラエティ番組も、捨てたものじゃないのさ!
   まさかこんなにも面白くて、こんなにも簡単なネコとりもちがあっただなんて!(笑)」

ネコ「ふざけるなよ(怒) 芸人のリアクションを見ろ、あれは明らかに大げさだ! 現に、俺だってそんなに滑らないぜ……うぷ!」

 ネコジャラは、盛大にスッ転んだ。 それこそ、ドリフのコントばりに。

ネコ「甘いなドラえもん、俺は『こんな重心が安定しない状態でも』攻撃ができる」

ドラ「何!?」

 ひゅっという音と共に、ネコジャラの爪にくっついていたローションが、あっさりと四方八方に散らばった。

ドラ「くっ、こんなにも簡単にローションの結界が破られるなんて……」

ネコ「どうだ、もう終わりか?」

ドラ「お前の方こそ、もう限界じゃないのか?」

ネコ「何だと?」

 ……。

 

ネコジャラは、腕に妙な違和感を感じた。

ドラ「君は、もう自由自在に動く事はできない」

ネコ「お前、俺の体に何かつけたな?」

ドラ「大正解! 」

ドラえもんの頭には、いつの間にやらバンドのようなものが巻かれていた。

ドラ「筋肉コントローラー」

ネコ「筋肉コントローラー……っ!?」

ドラ「君の体に、発信機を取り付けた! 君は、もう自分で発信機をとることはできないし、自分で話すこともできない」

 ドラえもんは、頭に巻いてあるバンドを指さしながら言った。

ドラ「僕の頭についてる、ヘアバンドみたいなのが発信機さ」

ネコ「僕の頭についてる、ヘアバンドみたいなのが発信機さ……ッ、卑怯すぎるぞお前(怒)」

ドラ「卑怯なのは、お互い様さ。 ネコは、結構頭のいい動物だからね」

ネコ「卑怯なのは、お互い様さ。 ネコは、結構頭のいい動物だからね。 ……そいつはどうかな? バカな猫も居るぜ」

ドラ「何? 」

ネコ「お前だよ……ドラえもん!」

 ひゅううう……。 木枯らしと共に、何かが後ろでざわめいている。

ドラえもんは、すぐに後ろを見た。 そして、そのざわめきが、何であるか理解した。

 野良猫の群れ。

グルルル、だとかフーッフーツだとか、そんな鳴き声。 そのたたずまいは猫であるものの、その猫から発せられる獣の気配は、
同じネコ科であるライオンやヒョウそのものだった。

 黒いネコから白いネコ、ブチにまだらに三毛猫。 よくもまあ、こんなにも色々な種類のネコが集まったものだ。

どのネコにも共通して似ているのは、眼はネコジャラにそっくりだった。

 

何者も信用しないと、決めきったような眼。

 

そのネコの一匹が飛び出すと、他のネコも続いて――ドラえもんめがけて襲い掛かってきた。

ドラ「なっ……!?」

ネコジャラは、満面の笑み(ローションから抜け出そうとしながら)で言った。

ネコ「なっ……!? こいつらは、俺の手下だ。 俺は、俺のための国を作る! どこぞのワン公の作り上げた国じゃねえ!
    おいお前ら、コイツのヘアバンドを取れ。 取った奴は、俺の家臣にしてやるぞ」

ドラ「ネコは、自由な生き物だ! 知らない誰かの言う事を聞いたりなんか――」

ネコ「ネコは、自由な生き物だ! 知らない誰かの言う事を聞いたりなんか――

    だから、てめえは飼い猫なんだよ。 ネコはな、餌さえもらえりゃ言う事聞くんだよ。
    チームじゃねえ、家臣でもねえ。 こいつらは、ただのチンピラだ。
    俺が雇った、親衛隊みたいなモンさ。

    ま、いねえよりはマシさ。 現に、今お前を倒す切り札に――っ
   て、んなこと聞いてる場合じゃねえか」

 

ドラえもんは、普通に逃げた。 逃げながら、作戦を立てた。

しかし、あまりその時間は無いようだった。 既に、胸の金属が剥き出しになっている傷が、悲鳴をあげていた。

 

 

 

その頃、のび太とノンちゃんは夕暮れを眺めながら、商店街を歩いていた。

野比のび太(以下のび)「んーー、もう、どこもお祭りは終わっちゃってるみたいだね」

ノンちゃん(以下ノン)「ねえのびちゃん、また一緒に野球ゲームやりましょうね」

のび「うん、いいよ。 でも次は、僕がホエールズね」

ノン「うん……」

 のび太は、なんだか奇妙な気持ちだった。 最近冷たい静香ちゃんと、最近再会した幼馴染のノンちゃん。

のび「うーん。両手に華(一つはカリフラワー)か。 これは、『バクマン。』の中井さんみたいにおいしい展開だな……。

   でも、確か中井さんはこの後、蒼樹さんに……うーむ」

ノン「ねえ、のびちゃん」

 のび太は、すぐに考えを悟られまいと必死で無表情を作った。

のび「な、何ノンちゃん?」

ノン「私、ちょっと思ったんだけど」

のび「何?」

 ノンちゃんは、急に立ち止まった。 そしtれ、ぐぐっとのび太の顔に自分の顔を近づけた。

のび「(え? 何? この展開? マッテ、ロマンスの神様! まだ心の準備が……。

     というか、神様ちょいタンマ! 顔NG! んぐ! ガッツさんも『んぐ』だって!

    ノンちゃん、顔荒れすぎでしょ! というか、唇も凄すぎ……砂漠?)」

 

ノンちゃんは、さっとのび太の眼鏡を取った。 それは、のび太の予想とは違う行動だった。

 な、なんだキスじゃないのか……。良かった。 危うく、メディア青年何とか防止条例違反するところだったよ……。

というか、あれ可決したの?

 

ノン「やっぱり! のびちゃんは、コンタクトレンズの方が似合うわ!」

のび「は?」

ノン「今、私の学校で眼鏡をかけてる男の子なんか、ほとんどいないわよ!

   のびちゃん、こんなにかわいい目をしてるんだから――いっそ、コンタクトに変えてみない?」

のび「そう? というかノンちゃん、眼鏡がかっこ悪いって、そりゃあ偏見だと思うな!」

ノン「そ、そうね……。 ごめんね、図に乗りすぎたわ」

 そういうと、ノンちゃんはしゅんとして、また歩き出した。

のび太は、上がり下がりの激しい人だなあ、と思った。 と同時に、ドラえもんの言葉が甦った。

『女心ってのが、全く分かってないよ!』

 そうか、ドラえもん。 そういうことだったのか。 僕は今まで、何も分かっちゃいなかったんだ。

自分のことばかりで、相手のことを考えてない。 多分、そういう無神経な所が、静香ちゃんにも――

 よし、行くぞのび太、いざ出陣!

のび太、『卑屈モード』!

 

 のび太は、遠くなったノンちゃんに向かってダッシュした。 いつもの商店街(やや潰れた店多し)が、違って見えた。

意外とすぐにおいついた、のび太は、『逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ』と心で唱えながら、ノンちゃんの肩を叩いた。

 

のび「ノンちゃん!」

ノン「うん?」

のび「ぼ、僕……。 実は、コンタクトレンズに変えようと思ってたんだよね……ハハ……」

ノン「そうなの?(笑)」

 のび太は、すぐに『嘘だよ、君を喜ばせるためさ』と自信満々でいいそうになったが、必死でこらえた。

のび「ま、毎朝……。 僕のコンタクトレンズを選んでくれない、ノンちゃん?」

ノン「の……のびちゃん?(汗」

のび「え? えーと、違うよ、それが、えーと……」

 

 必死で弁解を試みようとするが、上手く言葉が出てこない。 慌てて慌てて、そりゃあもう手汗が凄い。

そののび太の手を取って、ノンちゃんが言った。

ノン「いいわよ、選んであげる。 で、毎朝って何?」

 その瞬間、二人の間に大きな笑いが生まれた。 のび太は、正直なぜノンちゃんが大笑いしてるのか分からなかったが、
とりあえず笑った。そして、すぐに思った。

 あれ? ノンちゃん、笑ったら少しかわいい?

ノン「それと、私と一緒にルームランナーしましょうね♪」

のび「ぷっ、何それ? その器具、いつの?」

ノン「もう、意地悪なんだから! 」

 ノンちゃんは笑いながら、チラッと時計を見た。

もうすぐ、夜の6時になる……。

 ノンちゃんは、のび太と違ってしっかり手紙の内容を覚えていた。

 

『三、六時を過ぎた時点で、我々は本格的に君を追い込む。
   なるべく、お昼の間に我々を見つけて欲しい。

  もし六時を過ぎた場合、君は大切な人を守りながら行動する方が賢明かもしれない。』

 

 ノンちゃんは思った。 のびちゃんにとって、大切な人って誰?

直接、聞いてみる?

 でも、そんなこと恥ずかしくて言えない……。 さっき、ルームランナーのくだりで、サラッと聞けばよかった。

のびちゃんのことだから、もしかしてパパとかママとか?

 確かに、大切な人だけど――それでも、違うような気がする。

あれ? 私、誰か忘れてるような――

 

のび「そういえばノンちゃん、僕あれ買うの忘れてたよ」

ノン「あれって?」

のび「ドラ焼き。 ドラえもんの奴、機嫌悪そうだったからなあ。 適当にご機嫌取らなきゃ、ね」

ノン「え? 」

のび「何? 」

ノン「ううん、そ、そうね。 それ買ったら、戻りましょう、ね?」

のび「うん。 えーと、ドラ屋はこっちだよ」

 

 ノンちゃんは思った。 のび太さんの大切な人って、人じゃないのかも――

今まで、ずっと近くに居た人。 ううん、ロボット。 その名も――

 

 

ネコ「ドラえもん! てめえ、いつまで逃げ回ってるつもりだ! 」

ドラ「決まってるだろ、作戦立て終わるまでさ!」

ネコ「決まってるだろ、作戦立て終わるまでさ!
   おいおい、本当にそんなんでいいのか? 作戦つったって、どさくさに紛れて俺の動きを止めただけじゃねえか!」

 ドラえもんは、ドキリとした。 そのとおりだった。

正直、ドラえもんは走り回っている間に、猫が戦意喪失して、どこかに行ってくれればとさえ思っていた。

 ただ、やはり僕は甘かったのかもしれない。野良猫の執念という奴を、僕は飼い猫ゆえに分からなかったのだ。

奴らは逃げるどころか、数が増えているような気さえした。

けど、そんなことを気にしてる場合じゃない。

 何とかして、この猫を振り切る方法は――

焦るな、焦れば焦るほどベストな選択が出ない。 なぜ、こんな時に限って空気砲をぶっ放せないんだろう。

 それは、僕の左手が取れているからだ。 片腕に、武器類はあまりにも不利だ。

 

そのときだった。

 僕の武器って、何だ? 手足がダメでも、使える武器って?

そりゃあ、もうアレしかないでしょう。 いや、アレは最後の切り札だ。

 だとしたら、僕に今すべきことは? そう、猫になりきって考えるんだ。

 

ドラえもんは、ポケットから網袋を取り出し、それを口で噛み切った。

ドラ「おしり印のきびだんご!」

ネコ「おしり印のきびだんご!?」

 

 飢えていたのか、野良猫たちはすぐにそれに喰いついた。

そして間もなく、身悶えた。その光景はまるで、動物の虐待映像にしか見えなかっただろう。

 

ドラ「どーだ、ネコジャラ!」

ネコ「どーだもこーだもねえよ、ドラちゃん♪ 俺は、もう自由の身だぜ?」

 そう言うと、ネコジャラはずるずると音を立てながら、ローションのカーペットから身を出した。

ドラ「 え? 筋肉コントローラーは?」

ネコ「お前がネコ共に気を取られてる間に、数匹の猫に、探してもらってたんだよ。 俺の体のどこかについてるであろう、『アンテナ』をな」

ドラ「そ、そうか! アンテナさえなけりゃ、電波は受信されない……。 僕は、何てバカだったんだ!(汗」

ネコ「 おい、覚えてるんだろうな、ドラちゃん? 6時を過ぎると……」

ドラ「 6時? ……え、もうそんな時間!?」

 ドラえもんは、いつの間にか辺りが暗くなっているのに、やっと気がついた。

ネコ「面白かったぜ、今日は久々に……。 まあ、読者が面白いと思ってるかどうかは微妙だけどな」

ドラ「ネコジャラ、読者の心配してる暇があったら、自分の心配をするんだね!」

ネコ「そりゃあ、こっちのセリフだぜ……。 この一撃で、完全にお前を停止させる」

 そういうと、ネコジャラは爪を構えた。

ドラ「ひらりマントを越えるチートアイテム! 『時間ナガナガ光線』!」

 

 ドラえもんが引き金を引くと同時に、ネコジャラも爪を振るった。

今回、二人の攻撃はほぼ同時――いや、同時だった。

 

この二人の勝負は、後にネコの間では有名。

『今世紀、まれに見る糞試合』と――

 

 

 ドラえもんとネコジャラが河原へ行った頃、出木杉の家。

そこでは、既に静香ちゃんがお医者さんカバンで処置を終えていた。

 

源静香(以下静香)「どうしましょう、お母さん。 出木杉さん、とっても苦しそうだわ」

出木杉の母「やっぱり、病院に電話したほうがいいんじゃないかしら?」

 静香は、必死でそんな出木杉の母の行動を制止した。

静香「ダメです。 ドラちゃんの言う事は絶対です。 今すぐ病院へ行けば、もしかしたら搬送中に出木杉さん……」

 その時、静香の手をそっと出木杉の指がつたった。

出木杉英才(以下出木杉)「ぼ、僕は大丈夫だから……。 ドラえもん君の言う、『援軍』を待とうよ」

出木杉の母「英才、何言ってるの! 今、私はあなたのことが心配で心配で……」

静香「援軍っていうけど、助っ人だけにSKET団でも来るのかしらね」

出木杉の母「それはそれで、心配です(汗」

静香「私が心配なのは、最近の『SKET DANCE』の順位よ」

出木杉「二人とも、一体全体何の話を……!?(泣」

 

 ガチャン! 

 

何か、玄関の方で物音がした。 静香は、人差し指を自分の口の前に当てて、『静かに』の合図を送った。

 静香は、ゆっくりと玄関の方を見た。

 

――と、そこには3つの人影が見えた。

 

?「どーも、初対面ですね」

 眼鏡の少年、気は弱そうな少年。

?「まあ、あれは異世界の話ですから」

 前髪がものっそい垂れてる少年。

?「まー、ウチらはそんなこと関係あらへんがな。 フィクションやしな」

 

静香「え……誰?」

 

ただし、全員服装が明らかに変だった。 いや、着ている服がおかしいのではない。

着ている人間が、明らかにおかしかったのだ。

 

 

 

タダシ「明石薫役のタダシだよっ! 能力はサイコキネシス(念動能力)、CVは『あの方』だよっ!」

 

トラえもん「野上葵役のトラえもんでんがな! 能力はテレポーテーション(瞬間移動能力)、CVは『ヒメコ』だよっ!」

 

がり勉「三宮紫穂役のがり勉よ! 能力はサイコメトリー(接触感応能力)、CVは『To LOVEる-とらぶる-のララ』よ」

 

 

 三人は、組体操でも組むかのように、くっつきあった。

タダシ&がり勉&トラえもん「三人合わせて、絶対愚鈍チルドレン!」

 

 

 

 

静香は、その三人を見るなり電話のボタンを押した。

 

静香「すみません、救急で三人。 はい、頭のほうを怪我してます。 急いでください!」

出木杉の母「(さっ……先に、別の病院を呼んだですって……!?)」

出木杉「なんですか、この変質者は……(泣」

 

 

ネタ帳4 『絶対愚鈍チルドレン』

 SKETじゃなくて、全く別の他誌のをば。

 

キャラクターファイル4 タダシ・がり勉・トラえもん

 前の『Nの悲劇』の助っ人。 断れない人・ネクラ・ウザイ人。

 

 

この話は続きます。

 


 

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